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【プロジェクト名】
A RENOVATION OF FORK DWELLING IN CHAUDOC project
【設計クレジット】
西澤 俊理 + 滋賀県立大学 芦澤竜一・川井操研究室

 

 

現代でも、バナキュラーな建築 / 都市は可能か
集落の調査をしていると同じ集落の中でも、建物とその周辺環境が小綺麗に整理されて明るい雰囲気の一帯と、人々の手に余り荒れ気味な一帯とがある。前者では周辺環境に対して、それぞれの要素が存在する意味や関係性が生きていて、人々にも共有されている。敷地のあるチャウドックは、街全体で見ると、高床の床レベルや作られ方、場所の使われ方などにルールが見出しにくくランダムな印象で、荒廃した住居群も散見される。そこには、人々の暮らしという視点が欠落した、純粋に産業的・経済的な理由によって、街や家の構造が頻繁に更新されていく、ベトナム地方都市の社会背景がある。周辺環境に対して持っていた意味や関係性を分断されると、そこに意味づけされてきた人々の暮らしは孤立し、衰弱する。特にメコンデルタでは、人間と水との関係の変化が、生活に直接的で重大な変化を及ぼす。
本プロジェクトでは、一見乱雑に見える現在の街並みや住居に対して、その複雑な構造を形成してきた背景を理解する作業から始めた。更に、土着の構法や現在の建設技術、人々の暮らし方を調査した上で、特に現在の人々の生活にとって重要な構造を明文化し、周辺環境と各要素との関係性を繋ぎ直す。古民家の郷愁的な再現ではなく、現在の文脈に対するリアクションとして、現在のバナキュラーな住居を作ること。その時々で人々に広く共有可能なタイポロジーを提案し続けることが出来れば、激しい変化に晒されている現代の途上国でも、土着的で活き活きとした街並みを作れるかもしれない。

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